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脳血管内治療について


脳血管内治療について

脳血管内治療とは、文字通り「血管の中」から脳の病気を治す治療法です。足や手の血管から、「カテーテル」と呼ばれる細い管を頚部や脳の中の血管まで進め、患部を治療します。頭を「切る」必要はありませんので、目立った傷が残ることはありません。また局所麻酔でも施行でき、身体に対する負担も少なく、疾患によっては早期の社会復帰が可能です。現在では標準的な治療法のひとつといっても過言ではありません。
脳血管内治療では、血管の中から病変部に以下のような処置を施すことができます。
①病変部を詰める (脳動脈瘤コイル塞栓術、脳や脊髄の硬膜動静脈瘻・動静脈奇形の塞栓術、脳腫瘍の塞栓術など)
②血管を広げる (頚動脈ステント留置術、脳血管形成術など)
③血管の詰まりをとる (超急性期脳梗塞に対する血栓回収術など)
④病変部の局所に薬を流す

★脳動脈瘤に対するコイル塞栓術★

脳動脈瘤は脳の血管の一部がこぶ(瘤)状に拡張したものです。これが破裂すると「くも膜下出血」という脳の中の出血を引き起こし、非常に危険な状態に陥ります。脳動脈瘤は、たまたま脳の検査を行った際に発見されるもの(未破裂脳動脈瘤)もあれば、くも膜下出血を起こして発見されるもの(破裂脳動脈瘤)など様々です。
脳動脈瘤からの出血を予防するためには、従来は開頭して脳のしわを分け入り、瘤の首根っこをクリップで閉塞する「クリッピング術」が主流でした。しかし今から20年ほど前から、開頭せずに血管の中から脳動脈瘤の中にプラチナ製コイル(細い金属の糸くずのようなもの)を詰めこんで出血を予防する「脳動脈瘤コイル塞栓術」が世界的に普及し始めました。当院では当初より積極的に脳動脈瘤コイル塞栓術を行っており、現在では脳動脈瘤治療の第一選択となっています。
脳動脈瘤の形状は、まん丸なもの、いびつなもの、くびれ(ネック)がしっかりあるもの、寸胴のもの、全くネックのないものなど様々です。脳動脈瘤の中だけにコイルを収めるのが基本ですが、それが難しい場合は、風船を使ってコイルが出てこないように押さえ込んだり、2本のカテーテルからコイルを絡めるように収めたり、コイル突出防止用のステント(金属のメッシュ状の筒)を用いたりして、瘤の中にコイルを詰め込みます。コイルがうまく詰め込まれると、脳動脈瘤からの出血の可能性は著しく低下します。
当院では未破裂脳動脈瘤に対しても、破裂脳動脈瘤に対しても、コイル塞栓術を標準的治療法として行っています。未破裂脳動脈瘤の多くの例では、術後数時間から歩行可能で、数日で自宅退院が可能です。

(脳底動脈に多発する複雑な脳動脈瘤。周囲の枝を温存するように動脈瘤の中にコイルが留置された)

★内頚動脈起始部狭窄症に対する頚動脈ステント留置術★

頚動脈はあごの近くで枝分かれしますが、その中でも脳に向かう内頚動脈は脳の大部分を栄養するとても大切な血管です。この内頚動脈の起始部分は、動脈硬化によるプラーク(「さび」や「かす」という言葉がわかりやすいでしょうか)が形成されやすい部位として知られています。これが進行すると、内頚動脈が突然詰まったり、プラークや血栓が飛散したりして、脳梗塞の原因となることがあります。
頚動脈ステント留置術は、脳梗塞を予防するために、狭くなった頚動脈をバルーン(風船)やステント(金属のメッシュ状の筒)で拡張させ、脳への血流を改善させる治療です。術中に剥がれ落ちるプラークが脳の血管へ飛散することを防ぐ処置を講じながらステントを留置します。いくつかの方法がありますが、我々は症例に応じて安全で最適な方法を選択し治療を行っています。

(内頚動脈の起始部が著しく狭くなっていたが、ステント留置により良好な拡張が得られた)

★超急性期脳梗塞に対する脳血栓回収術★

心原性脳塞栓(脳梗塞)はとても怖い病気です。不整脈などが原因で、心臓内に血のかたまり(血栓)ができ、ある時突然それが飛び散って脳の太い血管が詰まってしまう病気です。突然に半身まひや言語障害が出現し、重症の場合は意識がなくなってしまうこともあります。詰まる場所によっては、重い後遺症が残ったり、命を落としたりする方もいます。
これまで、脳の太い血管(主幹動脈)が詰まってしまった場合は、ほとんどなすすべがありませんでした。しかし、近年、専用の器具が開発されたことで、血栓を取り除くことが可能になりました。ステント型カテーテルで絡めとったり、吸引カテーテルで吸い取ったりする方法です。
この治療法により、脳主幹動脈急性閉塞症の治療は急速に進歩しました。治療によって詰まりがとれると、直後から患者さんの症状が改善してくることがあり、我々もこの治療法の劇的な効果を肌で感じています。
この治療は、とにかく時間が勝負です。「発症」から「再開通」するまでの時間が早ければ早いほど、患者さんの後遺症が軽減することがデータで示されています。当院では、救急外来での初療担当医や看護師、放射線技師、脳血管内治療医などがチーム一丸となって、1分1秒でも「時間短縮」を目指し、患者さんの後遺症を軽減させるべく日々努力しています。

(中大脳動脈が途中で詰まっていたが、ステント型カテーテルと吸引型カテーテルの組み合わせで、大量の血栓が回収され、完全な再開通が得られた。麻痺や失語などの神経症状は再開通の直後から改善した。)

★★橈骨・遠位橈骨動脈アプローチ ~より低侵襲な治療を目指して★★

従来、脳血管内治療は足の付け根(鼠径部)の太い動脈からカテーテルを挿入していく方法が主流でした。しかし、手術後は止血のために数時間から半日程度の圧迫が必要で、同じ姿勢を強いられ、トイレにも行けず(もしくは尿道カテーテルを挿入)、患者さんにとっては術中よりも術後の安静のほうが「苦痛だった」という方が少なからずいらっしゃいました。また、稀にカテーテル挿入部に重篤な出血性合併症が起こることがありました。
これを解決するため、わたしたちは、最近、手首(橈骨動脈)や親指の付け根(遠位橈骨動脈)からカテーテルを挿入する方法を取り入れています。このアプローチの場合、重篤な出血性合併症のリスク低下、術後早期からの歩行が可能、止血圧迫時間の短縮などのメリットがあります。全例で可能なわけではありませんが、安全に施行できると考えられる症例では積極的に行っており、より低侵襲な治療を目指しています。

(親指の付け根(遠位橈骨動脈)からカテーテルが挿入されている。手術翌日、わずかな皮下血腫(あざ)がみられるのみで、針を刺した部分はほとんど目立たたない。)

(文責) 脳神経外科 錦古里 武志